第9話 2個のミルキー

公開日:  最終更新日:2014/05/22

発寒に不二家FC発寒下手稲通店という洋菓子店があるそうな。

ここの社長は大友さんという。

今日はその大友さんから聞いた話をしようかの。

12年ほど前のことじゃった。
暦の上では春とはいえ、歩道にはまだ少し雪が残り、まだまだ寒い頃のことじゃ。
その日は午後4時頃になると街の明かりも灯り始め、細かな雪もふってきた。
普段出ている従業員がお休みだったので、大友さんは1人でせっせとケーキを作っていたそうじゃ。

「ごめんくださーい!」元気な男の子の声が聞こえた。
「いらっしゃいませ~」と大友さんが来店したお客様の対応に出たそうじゃ。
来店したお客様は、小学生くらいの男の子とお母さんと思われる女性の2人だった。

男の子はショーケースの前に立ち、キラキラした目でケーキを見ている。
お母さんは、それを優しく微笑みながら見ているのじゃった。

大友さんは、「どんなケーキがいいかな?」と男の子に聞いたそうじゃ。
すると、お母さんが
「今日はこの子の誕生日なんです。いつも、このお店の前を通ると誕生日には不二家のケーキを買ってお家で食べようねって2人で話していたんです。」
と言ったそうじゃ。

「ありがとうございます。誕生日ケーキは2,000円前後からあります。」とお母さんに言うと、お母さんは少し困った顔をして「すみません。普通のショートケーキでいいんです。」と答えたのじゃった。

大友さんが改めて2人を見ると、大切に着ているような古そうなセーターと綺麗だが膝あてをしたズボンの男の子と、男性物のようなサイズの合わないジャンパーを着て、手編みのようなマフラーをした小柄なお母さん。

大友さんは、親子が苦労されているんだなと思い、男の子にこう言ったそうじゃ。
「君が選んだショートケーキをおじさんが素敵なバースデーケーキにしてあげるぞ!」
男の子は満面の笑みで「ありがとう、おじさん」と言うと、いちごのショートケーキを選んだのじゃった。

不二家ではバースデーケーキを注文すると、チョコレートのプレートに名前を入れている。しかし、ショートケーキには名前を入れないのが一般的だが、大友さんは男の子の名前を聞くと、チョコレートでできたカードに「Happy Birthday!○○くん」とホワイトチョコレートで書いた。

そのチョコレートのカードは1つのショートケーキには不釣り合いなほど大きかった。
大喜びの男の子に嬉しくなった大友さんはミルキーを2個そっと手渡してあげたのじゃった。

男の子もお母さんもとても嬉しそうで、大友さんも温かい気持ちで2人を見送ったそうじゃ。
男の子は、まるで宝物がつまった箱を持っているかのように大切そうにケーキの箱を持っていた。
片方の手はしっかりお母さんの手を握っていたそうじゃ。

雪が溶け、北海道にも短い夏がやってきた。
そして、またクリスマスで大忙しの冬を迎えたのじゃった。

あっという間に年が明けて、冬が終わりそうな頃、昨年男の子と一緒に来たあのお母さんが、来店した。
でも今年は1人じゃったそうな。

「今日、うちの子の誕生日なんです。ショートケーキでいいのですが・・・」

大友さんは、「昨年もご来店いただいた方ですよね?大丈夫です。ちゃんとバースデーケーキみたいにしますから」と笑顔で答えたのじゃった。

去年作ってあげたように、箱のなかにはチョコレートカードでデコレーションしたショートケーキとミルキーを2つ。
お母さんに渡すと、大切そうに受け取り、何度もお礼を言って帰られたそうじゃ。

その親子が来店してから5年目の春先のことじゃった。
その年は例年より雪が多く、まだまだ道には雪が残り、寒い日ばかりだったそうな。

そして、あのお母さんが来店した。

「いらっしゃいませ」笑顔の大友さんにお母さんは「今日は店長さんがいらっしゃったんですね。よかった・・・」と嬉しそうに言ったそうじゃ。

続けてお母さんは「ここ数年、毎年息子の誕生日のケーキを買いに来ていたのですが、私のタイミングが悪いせいか、店長さんがいらっしゃらなかったのです。でも息子には『不二家のおじさんが作ってくれたケーキだよ』と言って渡していたのです。息子は何も疑わず『おじさんのケーキはおいしいね』と言って喜んでくれますが、息子に嘘をついているようで心苦しかったのです。今年は本当に店長さんにカードを書いてもらえるとうれしいです。」

大友さんは胸が熱くなるような、気恥ずかしいような気持ちになったが、
「わかりました。いつもと同じように心を込めて作りますね」と言ってケーキとカードを作ったそうじゃ。そして、ケーキの箱には、あの時と同じミルキーを2つ。

そのまま月日は流れ、最初に親子が来店してから10年以上が経った。
その間、あのお母さんは毎年ケーキを買いに来てくれたようだが、大友さんが対応できたのは2~3回程度だったのじゃ。

5月のゴールデンウィーク直前のある日、発寒はとても暖かく春の香りがいっぱいで、空が青と赤に染まった、とても綺麗な夕方のことじゃった。

真新しいスーツを着た青年がお店に入ってきた。
大友さんはいつものように笑顔で「いらっしゃいませ」と声をかけたのじゃ。
青年は「こんにちは」と清々しいとても気持ちのよい笑顔で応えたのじゃった。

そして、こう言ったのじゃ・・・
「私は小学生のとき、このお店で店長さんに、いちごのショートケーキで素敵なバースデーケーキを作ってもらった者です。小さい頃、私は大きな病気をして入退院を繰り返していました。決して裕福ではない母子家庭でしたが、母は毎年このお店のバースデーケーキを買ってきてくれました。『不二家のおじさんが作ってくれたケーキだよ』と言って。でも、本当に不二家のおじさんが作ってくれたケーキは何年かに1度だけだったんですが・・・。明日は母の誕生日です。初めてもらったお給料で母に大きなケーキを買ってあげたくて来ました。」

そう言うと笑顔のまま青年はケーキを選びはじめたのじゃった。

大友さんは、あの時の小さな男の子を思い出した。大切そうにケーキが入った袋を持ち、お母さんの手を握って帰っていったシーンを・・・

そして、あのお母さんが毎年欠かさず来店して、不二家のおじさんが作ったケーキだよと言って息子にプレゼントしていた事、何よりこの子は『不二家のおじさんが作ったケーキじゃない』と知っていながらもお母さんを思って、気づかぬふりをして喜んで食べてくれていた事を考えると胸が熱くなった。

青年はショートケーキではなく、大きないちごの誕生日ケーキを選んだ。
大友さんは、お母さんの名前を聞くとチョコレートのカードに名前を入れ、その青年にケーキを渡したのじゃ。

そして、青年にこう聞いた。
「私が作ったケーキと従業員が作ったケーキ、どうして違いが判ったの?」

すると青年は笑顔でこう言ったのじゃ。
「2個のミルキーですよ。『ミルキーはママの味』って言うでしょ?多分、不二家のおじさんが私に『お母さんを大切にするんだよ』って言ってるんだって・・・だからずっと母を大切にしています。」

大友さんは、その言葉を聞いて涙が流れそうになり、気の利いた言葉を言えず「そうだったんだ」とだけ言ったそうじゃ。

ケーキを渡しながら、「今日は大切な初めてのお給料でケーキを買ってくれてありがとう。」と言うと、その青年は「来年もまた来ますから。」と言ったそうじゃ。

お辞儀して店を出ようとした青年を大友さんは呼び止め、何も言わず青年の手にミルキーを2つ乗せた。

青年は1度うなずくと、ミルキーをポケットに入れ笑顔のまま店を出たのじゃった。

めでたしめでたし

このお店ばなしは大友さんからの実話を元にカニ蔵が多少盛っています。

※ショートケーキへのネームプレートは現在は一部有料にて承っています。
※現在、ケーキを購入していただいた方にミルキーのプレゼントは行なっていません。

☆不二家FC発寒下手稲通店☆
札幌市西区発寒13条4丁目13-62 TEL011-663-6001
営業時間10:00~21:30  定休日:なし






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